「炭素会計の、圧倒的な自動化・効率化を」

booost(ブースト) technologies(テクノロジーズ)(株) 代表取締役 青井宏憲氏

今回は「8月脱炭素経営EXPO」出展企業の中から、先日イオングループ全社へのサステナビリティマネジメントシステムの提供開始を発表したブーストテクノロジーズの青井宏憲氏が登場。発表時より多くの各業界トップ企業の支持を集めるCO2排出量可視化システムについて、お聞きしました。数十件にわたる特許申請や、開発の経緯とは?最新の出展情報とあわせてお届けします。

・プロフィール【青井 宏憲】

2010年に東証一部コンサルティング会社に入社し、スマートエネルギービジネスチームのリーダーを経て、2015年4月にクライメート(気候)テックカンパニーbooost technologies株式会社を設立。
スマートエネルギー全般のコンサルティング経験が豊富で、脱炭素化のためのソリューションとして、創エネ、省エネ、エネマネにも精通。2021年9月にはCO2排出量可視化・脱炭素化クラウド『ENERGY X GREEN(エナジー エックス グリーン)』の提供を開始。

CO2の可視化から、脱炭素計画の策定、予実管理、オフセット、レポート作成までをワンストップで支援し、脱炭素化を加速させ、カーボンフリーな未来の実現を目指す。2022年1月にシリーズAで12億円の資金調達を実施。

■脱炭素社会実現を、震災前から目標に

―CO2排出量可視化・炭素会計クラウドシステム「ENERGY X GREEN(エナジー エックス グリーン)」は、イオンやZホールディングスなどトップ企業に採用されていますね。青井さんが創業されたのが2015年ですが、そこに至るまでの経緯を教えてください。

青井:私は1987年生まれ、35歳です。中学の頃から「将来起業家として社会に価値を生み出せる人間になりたい」との思いがありましたが、どの業界で起業すべきか決まりませんでした。まずは業界の選定期間として2010年に新卒でコンサル会社に就職し、1年目に脱炭素、エネルギーに関するマーケットの可能性を知りました。分散型再エネが普及することで、電力の自給自足や脱炭素化へへとつながるのは素晴らしいと思いました。当時は脱炭素化の機運も今ほど高くありませんでしたが、国もロードマップを策定しており、社会のためになり、マーケットも非常に大きく人生をかけてトライすることを決めました。私はスマートエネルギービジネスチームのリーダーとなり、太陽光や蓄電池、省エネなどの領域の知見を深める日々をおくっていました。
そこに、2011年の東日本大震災が発生。東北に出張していたチームメンバーの一人が、音信不通になり、しばらく安否が分からなくなってしまったのですが、その後、取引先の社長の自宅に避難しているとの連絡がありました。その社長宅には太陽光や蓄電池、エコキュートがあったおかげで、電気や水を確保でき、不自由なく生活できていました。「我々がやっている事業を、もっと世の中に広めていくべき」と、より強い使命感が生まれました。そして「テクノロジーの力で、より広く業界をアップデートできるようなものを世に出したい」との思いが高まり、会社立ち上げのきっかけのひとつとなりました。

 

―「ENERGY X GREEN」は、御社の脱炭素経営EXPO初出展となる2021年9月では既にリリースされていました。CO2排出可視化を訴えるサービスを、このタイミングで打ち出せた会社はほとんどいなかったです。なぜこのように早く動くことができたのでしょうか。

青井:当社はエネルギーマネジメント分野を中心に事業をスタートしておりましたがCO2排出量の可視化ソリューションに関しても、2018年頃にお客様より引合をいただいておりました。ですから国から脱炭素宣言があった際には、汎用的な形でリリースすることに力をそそぐことができたのです。

■圧倒的な自動化が、大きな強み

―CO2排出量可視化に関する製品は、今では国内外の企業から多数登場しています。その中で、「ENERGY X GREEN」の強みとは何だと思われますか。

青井:お客様からのいただくお声として他のツールより効率化の観点でリードしているとフィードバックを頂きます。さらにまた我々のソリューションは可視化するだけに終わらず、脱炭素化を容易に進めていくことができるUI、機能を大切にしています。
一般的なCO2排出量把握のシステムでは、カテゴリーを事前に振り分けたうえでそれぞれにファイルをアップロードする必要があり、これでは工数はさほど削減できません。多人数でエクセルに入力していた作業がシステムへの入力に変わるだけのことになります。炭素会計とは財務会計と同じように、知見が必要なうえ工数がかかるものです。各項目をスコープ1,2,3内の15のカテゴリーのどこに振り分けるのかについて、詳しい方が社内に基本的におられないという問題もあります。
こういったことを解決するために、我々はデータインプットの効率化だけではなく、炭素会計知識がなくても自動で振り分けができる機能を実装しました。API連携やファイルをそのまま取り込み、自動的にスコープを振り分けやカテゴリーの振り分けを行います。現時点でこの機能を持っているのはブーストテクノロジーズの製品だけであり、特許を出願中です。この圧倒的な自動化は、大きな強みだと言えるでしょう。

 

―なるほど、やはり一歩二歩と進んだところにいらっしゃる感じですね。

青井:また脱炭素化の流れで再エネ電源を導入や省エネ機器を導入する企業が増えていますが、そういった各電源の拠点別管理や発電量と自家消費量の管理も一元化できます。ホールディングス親会社と子会社グループ会社でそれぞれ権限や設定も分けて一元管理することもでき、経営にまで落とし込みやすい点も喜んでいただいています。
さらに、当社はもともとエネマネもやっておりますので、毎月の発電量を取り込み、省エネの管理をすることも自動化及び一元化できます。

■ナンバー1企業との提携で、脱炭素社会実現を

―先日、イオンのグループ全社及び取引先数十万社が、「ENERGY X GREEN」をカスタマイズした「AEON Green System」を導入すると発表し話題となりました。

青井:私達は、各業種業界のナンバー1企業、バリューチェーンのトップクラスの企業に向けたビジネスをしていくことが重要だと考えています。脱炭素社会実現のためには、CO2排出量の多いリーダー企業が中心となっていかないと目標達成は難しいと思っているからです。CO2排出量は直近50年で3倍と急激に増え、私達の子や孫の世代の暮らしに影響するまでの危機的状況にあります。野心的な目標をもち攻めて、CO2削減を効率的にうつことが重要なのです。他業種のナンバー1企業への導入が多数進んでおりまして、今後、随時リリース発表させていただく予定です。

 

―8月の展示会での出展内容について、教えてください。

青井:今回はブースの広さがこれまでの倍となります。触っていただける実機を揃えたスペースがある他、セミナーの開催やユーザー企業の事例紹介のコーナー、パートナー企業の紹介コーナーなどを用意する予定です。我々の製品は、ほぼ毎月アップデートしており、リリース時にはなかった機能も今はたくさん実装されています。ぜひこのあたりも、会場で触って試していただければと思います。セミナーには、業界トップクラスのユーザー企業担当者にお越しいただく予定です。対談セミナーや、なぜ他社ではなくブーストテクノロジーズの製品を導入したのかなどを分かりやすく伝えられるコンテンツを予定しています。

 

―展示会出展は、御社にとってどのような位置づけなのでしょうか。

青井:これまで脱炭素経営EXPOでは多くのリードをいただいておりまして、展示会は我々にとってはなくてはならない重要な場ととらえています。単に商談のリードを作るということだけでなく、こういった機能が欲しいなど現場でリアルなご意見がいただけることが、商品開発のうえでも非常にありがたいなと思っています。加えて今はコロナでオンラインベースの商談をしていますが、リアルな場で一度お話をさせていただいたお客様とは関係性ができているので、やはりその後もスムーズに入れる違いがありますね。

 

―脱炭素に悩む方のお役にたてる展示会になるよう、私達も力を注ぎます。本日は、ありがとうございました